想い花をキミに
降りしきる12月の冷たい雨の中、傘もささないで私は立っていた。
どれくらいの時間、そうして雨に打たれていたか分からない。

彼が帰宅する時に絶対通るであろう道に全身ずぶ濡れで突っ立っている状態の私を見て驚いた彼が、急いで駆け寄り傘を差しだしてくれた。

その傘を受け取ることはせず、ただ地面を見つめるだけの私に「とりあえず俺んちに行こう。」と彼が言った。

そこから歩いて5分くらいで着いた彼の現在のアパートは、以前住んでいたところと同じくらい広かった。

間取りは違うけれど、部屋の中は多少インテリアが変わったくらいでそんなに大きな変化はない。

足を踏み入れた瞬間、変わり映えしないこの場所がかつての私の居場所だったことを私に思い出させてくれた。

その空気を懐かしんでいると、後から、

「はい、これ使って。」

と隼太がタオルを手渡してくれた。
差し出されたタオルで髪の毛を拭くけど、一枚じゃ足りないくらいに私はずぶ濡れだった。
だけど私の心の中は、外の雨に負けないくらい荒れていて、どうしようもできないくらいなの。

「全然足りないな。今別の持ってくるから。」

そう言って背中を向けた彼の背を呼び止めるかのように、私は抱き付いた。
待って、そう声をかけるかのように。

髪の毛から滴る水滴がポタポタと足元こぼれ落ち、いくつもの水たまりを作る。
私の身体が触れた部分から伝わる水滴が、隼太の渇いた背中を湿らせていく。
今更言葉になんてできないよ。
どんな言葉を並べたとしても、あの時隼太を傷つけた事実は変わらないから。
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