美しい敵国の将軍は私を捕らえ不器用に寵愛する。

怯える夜

白起は戦が近づくと、夜に突然、目を覚ます事も多かった。

悪夢を見てうなされそのまま飛び起きるのだ。




ある夜、白起は突然、叫び声をあげて飛び起きた。

私はその声で目覚め、白起に言った。

「どうしたんですか?」




それに対して白起は言った。

「起こしてしまったか。すまない。」




私は言った。

「そんな事は良いんです。それよりどうしたんですか?」




白起は言った。

「夢を見たんだ。その夢には今まで俺の殺した人間が出てきた。そして彼らが口々に叫び、おれを糾弾するんだ。お前を絶対に許さない。必ず地獄に落としてやるとな」




その言葉を聞いて私は我慢の限界だった。

もうこれ以上苦しむ白起を見たくなかった。

だから私は言った。

「もうやめたらどうですか。将軍は他にも居るんですし。あなたは戦をするべきじゃないと思います」




すると白起は笑みを浮かべて言った。

「俺も良く、そう思う。だがそれは無理だ」

「どうしてですか?」

「結局俺は戦しか知らないからな。お前と違って俺には戦が強い以外の価値は無い。だから俺は壊れるまで戦うしかないんだ」




それを聞くと私は思った。

そんな事はないと。

白起は凄く繊細で、でも優しくて、ストイックで、どこか夢見がちで、浮世離れしている。

そんな魅力的な人間だ。

でもそんな事を言っても彼には通じないことは分かっていた。




それに、白起は戦という病におかされている。

そんな彼が戦を止める事は不可能なんだと思った。




だから私は一緒に背負う事にした。

そして言った。

「じゃあ私も壊れるまで戦います。寝るのが怖いなら寝なければ良い。夢を見る気力がわかなくなるまで、私と語り明かしましょう」




白起はそれを聞いて笑い出した。

「それも良いかもな」




そして私達は一晩中語り明かしたのだった。
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