美しい敵国の将軍は私を捕らえ不器用に寵愛する。

勝利

そして戦が始まった。

白起の秦軍には作戦などなかった。

ただ目の前に突撃し、殺戮の限りを尽くす。

それが彼らの唯一の戦法である。




そしてそれで彼らは勝利できてしまう。

それほど彼らの大将の姿は勇敢で神々しいのだ。




白起は弓を恐れず常に軍の先頭を進む。

その武勇はすさまじく周りの者は全て切り伏せられ気付いたら、敵陣の深くに入り込んでいる。

そしてそれに乗せられて秦軍全体も敵陣を深く切り裂くのである。




私は安全な丘の上でただ戦を眺めているだけだった。

周りの兵站担当の兵士達は白起の姿に大歓声を上げた。




でもどうしても私にはよぎってしまうのだ。

夜中に苦しむ白起の姿が。

彼は一体どれほどの犠牲の元に、これ程の力を振るっているのだろう。




私の目からは涙が流れた。

それを見た一人の兵士が「良かったですね」と声をかけてきた。

きっと彼らは私がうれし泣きをしたと思ったのだろう。




そして私は気付いた。

これが白起が抱えてきた孤独なのだろうと。

< 25 / 37 >

この作品をシェア

pagetop