社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】
その後、仕事の話を交えながら、酒と食事を続け、1時間程経ったところで、早野さんが切り出した。

「実は、うちにもこちらの秘書さん程ではないが、なかなか可愛らしい娘がおりまして…」

修ちゃんは、日本酒を口にしながら、聞いている。

「安井さんのような方に貰ってもらえないか
と、常々思ってるんですよ。」

話ぶりから察するに、修ちゃんのメインの話題は追加取り引きだが、この社長は娘さんと修ちゃんを妻(めあ)わす事にあるようだ。

「それは、勿体ないお話ですね。
お嬢さんにはもっと相応しい方がいらっしゃる
でしょうから。」

修ちゃんはさらりとかわす。

「それがいないから、困ってるんですよ。
安井さんに特定の人がいないのであれば、1度
会うだけでも。」

早野さんはにこにこしながらも押しが強い。

「………………

実は、まだ公にしてなくて、早野さんに
初めてお話するんですが…

私にも、大切な人がおりまして、今、一緒に
住んでるんです。

大変ありがたいお話なんですが、申し訳
ありません。」

ん!? 修ちゃん!?
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