社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】

「ありがとうございます。
では、遠慮なく。」

私は、ビールに口を付けた。

「ごめんなさい。
私、まだ皆さんのお名前を覚えていなくて。
鷲見(すみ)部長、紹介していただけますか？」

私が隣の鷲見総務部長にお願いすると、鷲見部長は驚いたようにこちらを見た。

「私の事はご存知でしたか。」

鷲見部長は、修ちゃんより少し年上な感じのあっさり塩味タイプのイケメンさん。

「部長以上の役職の方は、業務上、必要なので
覚えました。
でも、下の方は、なかなか接する機会も
なくて… 」

私がそう言うと、鷲見部長は、同じテーブルにいる人たちを紹介していってくれた。

私はそれを頭に叩き込んで、ビール片手に立ち上がる。

「ちょっと挨拶してきますね。」

隣の修ちゃんに声を掛けて、各席を回る。

総務部はほとんどが女性だ。

総務部総務課の中に、総務係・庶務係と受付係があり、一段と華やかなのが受付係の女性たちだった。