メガネ君は放課後ヤンキー?!

次の日の朝。


8時10分、喧騒の中流れるように教室に着くと机の上に、昨日なくしたはずの塾の手帳が置いてあった。


あー!!よかった!!
今日塾まで行って探そうと思ってたから。

でも、誰だろう?
この学校に同じ塾の人いたっけ?

まだ通い始めて日が浅いからか、一度も同じ高校の人を塾で見たことがない。

手帳には名前も学校名も書いてあるから、 誰かが人づてに渡してここにたどり着いたのかもしれない。

手帳は返ってきたし。故意に誰かに取られたわけでも無さそうだから、警戒しなくても大丈夫だろう。

今は何も考えずに、ぼーっとしてたい。

朝だし。

イヤホンをつけると右腕を机の上に投げ出してその上に頭を乗せた。

何気なく、
窓側の席で本を読む田中くんの横顔を眺める。


ああ、今日も綺麗な横顔だなぁ。


視線を感じたのか、田中くんが振り返って
田中くんと目が合ってしまった。



焦って目をそらした。けれど、一瞬。田中くんも焦ったような表情をしていた気がした。

オーディオプレーヤーの音量を上げて、
無駄な推測と焦燥感なんて断ち切ってしまおう。

そうだ、次の授業の準備でもしておこう。
現代文の教科書を出して読んでみる。


ある日男が10センチだけ空を飛べるようになった話。不思議な感じが好きなんだよね。
ある日突然ラジオから流れる奇妙な話。


ええと、確かこの後ろの方のページだったよね、
教科書をめくっていると、

「中村さんちょっと来て」

教科書をめくっていた左手の手首を、白く冷たい手にそっと掴まれて引っ張られた。椅子から滑るように立ち上がって、もつれる足を必死で動かす。

見慣れた後ろ姿に困惑する。
田中くん?

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