決して結ばれることのない、赤い糸
この手を取ったら、きっとわたしの気持ちは少しは軽くなるかもしれない。

わたしの気持ちを汲み取ってくれるカズがそばにいてくれるなら。


カズは、それでもいいと言ってくれている。

だから、このままカズに逃げてしまえば――。


一瞬、そんなことが頭をよぎった。


…だけど。


――カズがよくても。

わたしがいやだ。



「ありがとう、カズ。…でも、ごめんね」


わたしは、カズが差し伸べてくれた手を取ることはできなかった。


カズの告白には驚いた。

わたしのことをとっても想ってくれていると知って。


わたしが隼人のことを想い続けたままでも。

自分が隼人の代わりでもいいからと。


半端な気持ちじゃ、そんなこと言えるわけがない。


だから、カズの真剣な気持ちは十分に伝わった。
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