決して結ばれることのない、赤い糸
鑑定結果を見たあとの記憶は…曖昧だ。


気づいたら隼人と電車に乗って、…この海にきていた。


海水浴シーズンと違って、12月のこんな寒い日に海にくる人なんて、わたしたち以外だれもいなかった。


「…あっ。あのコテージ」


浜辺から見える1軒のコテージを指さすと、隼人は優しく微笑んだ。


「かりんと初めてキスしたところだ」

「違うでしょ…!みんなで泊まったところでしょ!」


と言いつつ、隼人と初めてキスしたのがつい昨日のことのように思い出され、わたしは顔が熱くなった。


「いろいろあったね」

「そうだな」


わたしたちは見つめ合うと、そっと手を繋いだ。

そして、海に沈もうとする夕日に向かって歩き出す。


波を蹴飛ばしながら、ゆっくりと一歩一歩前に。


水の冷たさなんて感じない。
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