決して結ばれることのない、赤い糸
夜空が映る暗い海。

さっきと同じ波の音。


隼人と2人だけの世界に行こうと思っていたのに、なにも変わってなんていなかった。


びしょ濡れの服が肌に張り付き、寒さで体の震えが止まらない。


「…そうだっ。…隼人!?」


辺りを見回すと、少し離れたところで砂浜にうつ伏せで倒れている隼人を見つけた。


「隼人…!ねぇ、隼人…!!」


体を抱き起こし、何度も名前を呼ぶ。


「…やだっ。死んじゃいやだ…!!」


あふれ出す涙が頬をつたい、隼人の頬に落ちる。


「…んっ……」


すると、ゆっくりと隼人が目を覚ました。


「かり…ん…?」

「隼人…!」


まだ虚ろな目の隼人を力いっぱい抱きしめる。

そして、声を上げて泣いた。


証明されてしまった隼人との兄妹関係。

せめてあの世で結ばれようと、隼人とともに海へ入った。
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