決して結ばれることのない、赤い糸
それが…ずるい。


「そんなことないよ。俺だって、かりんのことになると余裕なんてないよ」

「嘘だぁ…」

「嘘じゃないって!」


そう言うと、隼人はそっとわたしの手を握った。

そして、その手を自分の左胸へ――。


わたしの手のひらに伝わる…隼人の胸の鼓動。

ドクンドクンとわたしのと同じくらい速くて、うるさく暴れていた。


「隼人、…これって」

「だから言っただろ?余裕なんてないよって」


隼人は、表情や態度に表れなかっただけで――。

本当はわたしと同じだったんだ。


「これでわかってくれた?」


隼人の問いに、わたしははにかみながらうなずいた。


そして、星が瞬く夜空の下――。

わたしたちは、どちらからともなく唇を交わした。



「かりん。赤い糸って、信じる?」
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