もう一度だけ - Just One More Time
オリーブの道
(もうさっきから延々と、gif 動画みたいに同じ風景の繰り返しだな)
バスの窓の外に流れて見えるのは、まるで一列に並んだプッシュピンのように、波のように起伏する土地にしがみつくように植わっているオリーブの木々。
背丈の低いオリーブの木々が、ずらっと小高い丘の向こうから並んで現れては波のようにうねりながら谷間へと消えていく。
その風景の単純さに眠くなるのを通り越して、頭が痛くなってきた。
シャツの袖をめくって時計を確かめる。
目的地までは、あとどのくらいあるのだろう。
イベリア半島を南へと下るバスには、日本のバスのように目的地表示もアナウンスもない。
『結婚することになった』
久しぶりに聞いた懐かしい声は、静まりかえっていたはずの私の心の中に、静かな波紋を引き起こした。
あれから、もう3年。
でも、まだ3年。
先輩は、違う人を選んで前に進むことにしたんだ。
でも私には、何かを言う資格はないんだ。