もう一度だけ - Just One More Time
ぼんやりしていたら、目の前にお皿がことりと置かれた。

パンケーキ? オムレツ? 

よくわからないが、焼き目の入った厚みのあるケーキみたいな形の丸い食べ物だ。


『たべてごらん、スゴイ旨いから』



これ、私に? 食べろって言われているのかな?

残念ながら私のスペイン語の聞き取りの力はほとんどないに等しい。

こんなことになるのなら、先輩にもっと教えてもらうんだった、、、。



その時、テーブルの斜め向こう側から陽気な子供たちの歌声が聞こえてきた。


「Guantanamera, guajira guantanamera♪」


あ。これ。

キューバの有名な曲、グアンタナメラ(Guantanamera)だ。

スペイン語圏の出身の人なら誰でも知っている歌だって、先輩が言っていたっけ。


長いバスの旅に飽きていたからだろうか、よく知っているメロディを耳にして嬉しそうに飛び跳ねながら歌う子供たち。

年は4歳から8歳くらいだろうか。可愛い。



小さな女の子のお下げ髪が上下にびゅんびゅん跳ねるのを眺めていて、あることに気がついて目を見張った。


子供たちの真ん中でギターを弾いている男性。


白いコットンのシャツに細身のジーンズ。さらさらした黒髪。

アジア系というより、、、日本人に見える。


でも、まさか。


この人、バスの乗客にいたっけ?

いないよね。


こんな地図に名前も載っていないようなスペインの片田舎のレストランで、日本人の男性が一人でギターを弾いているわけがない。


そう思いながらも何故か視線が外せない。


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