もう一度だけ - Just One More Time
年は20代後半? 30はじめくらい?
私とあまり変わらなさそうだ。
それにしてもこの人、指が細くて長い。
その華奢な指が滑らかに弦の上をスライドしていく。
……上手い。
こんな大衆的な曲を弾いているのを聞いただけでもわかる。
この人、ギターの腕前はかなりのものだ。
彼の指を食い入るように見つめていたせいか、曲が終わり私の方を見つめる視線に気づかなかった。
ふと顔を上げると、鳶色の瞳が私の方をまっすぐに見ている。
あごから頬にかけてのラインがすっきりしている。端正な顔立ちの人だな。
だけど、何よりも。
何よりも、目ヂカラとでもいうのだろうか、強さを放つ視線に絡め取られて、ますます彼から目を逸らせなくなってしまった。
どきん。
なぜだか心臓が大きく音を立てた。
何も言わずじっと見てただなんて、やはり失礼だったのだろうか。
「ぺ、ペルド、」 Perdon(すみません)という、私でも知っている数少ないスペイン語の表現を記憶の中から引っ張り出して口にしようとした時。
「ギターに興味があるんですか」
視線の強さに似合わないソフトな低音の声が返ってきた。
それもまったくアクセントのない日本語で。