別のお話。
シヅキは会話のキャッチボールが下手だ。
問いかけに答えずに急に名前を名乗ったり、あまり意味のなさそうなタイミングで考え込んだり。
そしていまは、やはり俺の問いかけには答えず手をだせと言っている。
慣れた。
立ち上がるから手を貸してくれとか、きっとそんなニュアンスで手をだせと言っているんだろう。
そう思った。
シヅキとの距離を詰めて片手を差し出す。
俺の手に重ねるように、シヅキはゆっくりと色の薄い手を伸ばす。
「え……」
重ねられたその白い手は、触れた実感のないまま俺の手をすり抜けた。