爽やかくんの為せるワザ





「あれ、下で待っててくれてたの?」




委員会が行われていた教室の近くまで急いで向かって、藍くんを待っていること数分。


ちょうど委員会が終わって中から藍くんが出て来た。




「うん……校内散歩してた」


「へぇ、いいね。でも待たせてごめんね」


「そんなっ、委員会だし謝らないでよ!」


「あはは、ありがとう。じゃあ帰ろっか」




爽やかな笑顔を見せてくれる藍くんを見つめながら、私は少し胸が苦しくなった。



……さっきの、

藍くんにはなんか……話し辛い。



ただの、普通の、会話だった。


でも空気が……少し違っていた。

心臓がざわざわするような変な感覚が襲ってくる。




「……珠姫ちゃん?」


「えっ?」




突然顔を覗き込まれて、私は思わず後ずさりしてしまう。




「なんか、元気ない?」


「そ……そうかな。普通に元気だよっ」


「そう?ならいいんだけど」




優しい笑顔を向けてくれる藍くんに、胸がまた苦しくなった。


そして藍くんは何も言わず私の手を握って歩き出す。



……藍くん。

なんて優しいんだろう。


きっと気を遣って何も詮索しようとしないんだろうな。


……私もしっかりしなきゃ。



うん、もうあのことは気にしない!


雰囲気が違うっていうのは私の勘違いだろうし。

特に深い意味も何もないんだ。


藍くんも心配しちゃうし、私が気にし過ぎたら駄目だよね。

佐賀くんも美術室行く時は普通だったし。


うん!

考えるのはここでおしまい!



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