爽やかくんの為せるワザ
「全然大丈夫ッ!!!」
音割れする程の大声を花恋に向けて発した敬吾は、弾けるようにボールへ向かって走り出した。
部員からは「うるせー」と笑い声が聞こえてくる。
花恋ちゃんだ!
俺、花恋ちゃんと話してる!
すごい。
花恋ちゃんが俺に「ごめんね」って言ってくれた。
……俺いつもどうやって女子と話してたっけ!?
分かんなくなったぞ!
ボールを拾い上げて花恋の方へ振り返ると、女子達が「敬吾犬みたーい」と笑っているのが聞こえてきた。
犬?
「か、花恋ちゃん!!ボール!見つけてくれてありがとう!」
大声で花恋に声を掛けると、今度は部員と女子達がどっと笑い声を上げた。
「ちょっと敬吾ー!ボール見つけたのあたしなんだけどー!」
「ほんとに犬じゃん敬吾。なんか可愛いわ」
「お前さっきから声量やべーよ」
「そんな大声出さなくても聞こえるっての」
がやがやと笑い声が聞こえる中、敬吾はきょろきょろ周りを見渡して「え、なんか違った?」と首を傾げる。
そんな姿を見て、思わず花恋も笑みを零した。
「あ、じゃあボール蹴ってくれてありがとう花恋ちゃん!」
「なにそれー!わざわざ言う必要ある?」
「てかなんで花恋だけなの!」
敬吾のアホさっぷりにその場にいた皆が笑う。
敬吾が花恋のことを好きだという事実は、ここにいる全員が知っている。
花恋ただ1人だけを除いて。
「どういたしまして!」
笑顔で会釈をしてみせた花恋。
敬吾はそんな花恋を見つめたまま、そのあまりの可愛さと愛しさに再び硬直してしまった。