爽やかくんの為せるワザ




「俺……やっと好きな人できてさ、珠姫ちゃんのことほんとに大切にしたいって思ってて……」




珠姫ちゃんを傷つけるようなことはしないししたくない。


ちゃんとお互いが幸せになれる道を選んでいきたいと思ってる。




「……なのにさぁ」


「ん?」


「珠姫ちゃんってすっごい可愛いんだよ」


「おいおい、凄まじい惚気出たな」


「いや、なんか付き合ってからより強く思うようになって……俺やばいんだよね」


「やばい?」


「……たまに理性飛びかける」


「……ほう」




目を光らせてぐっと前のめりになるカツ。

俺は額に手を当てて肘をついた。




「今まではそんな風に思ったことなかったんだけど……。まさか俺がこんな奴だとは……割とショックなんだよ」


「いや普通じゃん。逆に今までの藍がおかしい」


「俺ってむっつりなのかな……」


「ぷっ、あははは!むっつりて!」


「馬鹿っ、声大きいって」




ここ教室だってば。

こういう時は緒方か足立に突っ込んでもらいたいところ。




「ごめんごめん。でもむっつりって言葉が藍に似合わな過ぎて笑う」


「……きっと、珠姫ちゃんも俺がこんな奴だとは思ってない気がするんだよ」


「そう?でもキスしたんだろ?」


「……あの時は……」




〝別に、そういうことに興味がないわけじゃないから〟


〝我慢できなかった〟




……やばいな。

穴があったら入りたい。


あの時も俺は珠姫ちゃんが可愛くて、どうしても自制出来なかった。

大切にするつもりだったのに、己の欲求を優先させてしまった。


……自分の意志の弱さにも落胆する。


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