爽やかくんの為せるワザ



「あはは、推薦されちゃって」




ぽりぽりと指で顔を掻く仕草は、藍くんの癖なのかもしれない。

彼は照れ笑いにも似た笑みをこちらに向けている。


その横でカツくんが「クラス全員が推薦したんだ」と、自信満々に謳っていて。


クラス内にいた生徒も何人か聞こえていたらしく、教室の隅の方から「1組藍くんだって、ミスターコン」と小さく聞こえてきた。




「…ま、当然っちゃ当然ではあるよね」



頷きながらまず話し出したのは桃ちゃんだった。




「藍くんイケメンだし、爽やかだし優しいし。基本短くても彼女いるから騒がれてはなかったけど、結構人気だもん」


「ま、優勝は難しいだろうけどな。羽水もそのつもりはなさそうだし」


「へぇー!羽水すげぇなー!人気とか羨まし〜」




沙羅ちゃんと敬吾くんも桃ちゃんに続いて話し出す中、私は照れ臭そうに苦笑いを見せる藍くんをじっと見つめた。



藍くんがミスターコンに出ることはびっくりだけど、桃ちゃんの言う通り確かにかっこいいし優しいし人気は高そうだし。


当然といえば当然だと思う。


……すごいや。



ミスターコンに出れば今よりもっと人気は高くなりそうだし、藍くんに声を掛ける女の子も増えるだろうな。

そうなれば、藍くんの〝運命の人〟に……もしかしたら出会えるかもしれない。



……出会えたらいいね、藍くん。


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