冷たいキスなら許さない
「ちょっとやりすぎたか」
落とされた無神経な言葉にカチンときて一気に脳みそが活動を再開する。

ホントに腹が立つ。
この暴君はうるさい私の口をふさぐために手っ取り早く自分の唇を重ねたということか。

目の前にある大きな大胸筋の右側に向かってグーでパンチを繰り出した。
それは確実に決まると思ったのに、楽々と暴君の右手で受け止められていた。

「あぶねっ」
渾身の一撃ではなかったものの軽く受け止められたことに一層の悔しさで身体が震える。
黙らせるための暴君のキスに溺れてしまった恥ずかしさもあり口を開くことができない。

おまけに暴君はさらに暴挙を重ねる。私の拳を受け止めたままの状態で私の額に軽くキスを落とすと、ぐいっと私の身体を自分の胸元に引き寄せたのだ。

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