冷たいキスなら許さない

結局、言い逃げしたのは社長の方で。
よくわからないまま私は会議室に取り残され、社長はフライトの時間が迫っているとかで慌ただしく出ていってしまった。
私は状況を把握することもままならず放置されたってわけ。

カナダに5日間。
その間に宿題を出された。

自分の気持ちに向き合って欲しいと。

「アイツはお前のことが忘れられなくてやり直したいって思ってるんだろ?」
社長は再会した櫂の私への気持ちに気が付いていたと言っていた。

「桐山への気持ち、俺との関係、灯里の気持ち。お前はあいつと別れてからもう恋愛はいらないと言ったけどあれから4年以上たっている。
今はどうだ?さっき俺とキスしてどうだった。何か感じなかったか?
考えた結果が桐山のもとに戻るって選択でも仕方ない。もちろん、そうならないように祈ってるが」

ちょっとだけ笑うように目元を緩めてやわやわと私の頬をもみながら
「そろそろ前に進んだ方がいい。だから考えろ、宿題だ」
そう言って大和社長は会議室を出て行ったのだ。


ああ、もうっ。
私は両手で髪をガシガシとかきむしった。
ほんっとに暴君なんだから。
ありえない。
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