冷たいキスなら許さない
「そんなこと、私に信じろと?私に謝るふりをして”西倉恭香はストーカーじゃない”ってそう私から櫂に口添えして欲しかったんですか。私はストーカーの定義が何なのかは詳しく知りませんけど、あなたは私を含めて櫂の知り合いに接触しない方がいいんじゃないですか。ヘタしたら犯罪ですよ。実際私も怖かったし」

「今夜私はたまたまここに居ただけーーって言ったら?ここは駅なんだし、あなたの家の前でもあなたの本来の行動範囲でもないでしょ」

私の強い言葉にも西倉恭香は言い返すのをやめない。
呆れるのを通り越してすごいとすら思う。

「じゃあ、偶然出会ったのなら私に用はないですよね。もう帰ります」
踵を返して立ち去ろうとすると、
「待って」
とまた呼び止めてくる。

「いい加減にしてもらえませんか」
私の我慢の限界も近い。

このまま櫂に連絡した方がいいのだろうか。
いや、これ以上櫂がストレスに感じることをするわけにいかない。
西倉恭香から目を離さないようにして私はどう動くべきなのか考える。

「ねえ、どうしてまたあなたなの?」
「は?」
「あの時完全に別れたでしょ?なのに私が日本を離れている間にーーいつからまた付き合うことになっているの?どうして私じゃなくてあなたなの?」

傲慢な彼女の本心が出た。
私に会って聞きたかったのはそれなんだろう。いつから私たちがよりを戻したのか。

自分と私は同じ元カノ。この人の中では同列だと思っている。

「櫂が私とやり直せるのなら自分とだってやり直せるはずだ、とでも?」

「そうよ!」
西倉恭香の瞳が大きく開いて充血し始める。
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