君に心を奪われて



気付けばもう手術は終わっていた。体の中で不思議な違和感がする。


体が赤くなっていく。もしかして、ダメだったのか。


「翼!」


花菜の声が遠く聞こえる。インターフォン越しの声だった。


「急性GVHDですね。きっと、頑張れば行けますよ!」


担当医が笑顔でそう言った。頑張っても生き伸びることはないのに。


お腹が張っている。これは腹水とか言ってたな。白血球が臓器を攻撃しているのだろう。


もう、俺は死ぬのか……。怖い。まだ君に話したいことがあるんだ。


「花菜……祥也と幸せに、なれ……」


もう祥也しか希望はなかった。花菜をこよなく愛してる祥也と結ばれてくれたらそれでいい。


「翼、何言って……」


「祥也しか……花菜を笑顔に出来ない……」


もしも、まだ生きていけるとしたら、俺は君にプロポーズをして結婚式を上げていると思う。それすら、願わなかった。


「加藤先輩!ふざけんなよ!」


なぜか祥也の声が聞こえた。看護師が慌ただしく追いかける様子がうっすらと見えた。


「花菜は加藤先輩が幸せにしてやれよ!加藤先輩しかいないんだよ!どんな運命だとしても、加藤先輩が幸せにしてやれよ!」


「祥也、よろしく……」


俺は薄れていく意識の中、最期に俺は言った。


「花菜、さようなら……愛してる……また、会おう……」


涙が一筋零れた時、俺は暗闇へ吸い込まれて行った。


もう、俺、死んだんだな……。








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