全てを失っても手に入れたい女が居る

「すぐ会えると分かっていても、やっぱり寂しいな?」

「ごめんなさい…マンションの後片付けもありますし、それに、もう少し母達との時間を持ちたいので…」

「謝る必要ない。向こうへ(アメリカ本社)に行くと暫く帰れないからな?しっかり親孝行しておいで?」と、言って梨華を抱き締めキスをした。

空港まで見送ってくれた梨華が、この時既に俺との別れを決めていたとは知らなかった。

抱き締めあえばどんな顔をしているか
見えない事に気づかなかった。
梨華がどんな顔してどんな想いでいるか
あの時の俺は知るよしもなかった。

約束の日、空港で梨華を待っていた。だが梨華はいっこうに姿を現さない。

心配になって梨華に電話したが繋がらず、会社に戻って念のため人事部のデータを確認したが梨華のデータがなくなっていた。どうなっているのかと日本支社の耀一に電話したら、梨華は先月退職したと言う。

「辞めたって、どういうことだ!?
耀一!? おまえ何言ってるだ!?
まさか梨華になにかしたのか!?」




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