転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
「自意識過剰かどうかは、俺が直々に確かめてやろう」

私の肩が掴まれ、グイードの頭が焦らすようにゆっくりとにじり上がってくる。最初はふざけているのかと思い我慢していたが、胸に額が触れる感覚がしたところで限界が来た。

「ちょ……やめてください!」

思いっ切り肘を後頭部に入れる。涙の滲んだ目で頭を撫でさすりながら、グイードは頷いた。

「なるほど、まあ婚約をした仲だしな。急ぐことは無い。美味しいところは大事な時に取っておこうということなのだろう?」

「ち・が・い・ま・す!」

何だかスキンシップが際限なく激しくなっている気がするのは気のせいだろうか。気のせいであってほしい。

そろそろ私も耐えられる自信が無い。流されてしまいそうだ。

最初からドキドキはしていたけれど、気持ちを自覚してからは触れられるだけで蕩けそうな思いがするのに。

グイードもグイードだ。全然触れ方が違う。1番初めのキスとは比べ物にならない。指が一本、ほんの少し触れるだけでわかる。自分は大切なものに触っているのだと嫌でも伝わってくる……いっそ噎せ返りそうなくらいに。

「ん?」

私の視線に気がついたグイードが首を傾げた。

あなたを見るだけで幸せなんて、そう言ったら呆れた顔をして笑いますか?

私は何でもないと首を振って、こっそり微笑んだ。



翌々日、王のサインが書かれた書状が届いた。

婚約発表と王位継承の発表は二週間後の夜会で行うそうだ。

ダンスは踊らなくて済みそうなので、私はほっと安堵の息をついた。進行の流れを見た限りほとんどは座っていればいいみたいだけれど、ずっと城の限られた場所で過ごしていた私は初めて公の場に出ることになる。

何事もなく終わりますように、と────グイードの横顔を見つめながら口の中で呟いた。

< 87 / 100 >

この作品をシェア

pagetop