限定なひと
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「……ねぇ、チルチルちゃんさ、なんかあったの?」
「……へ?」
 朝、慌てて冷凍食品を詰め込んだだけの、味気ないお弁当を前に私はギクリと箸を止めた。私の向かいでは、派遣社員で人事課アシスタント業務の由美さんが私と似たような内容の弁当をつついている。
お昼休みとは言え、女子社員は電話当番も兼ねて留守番をするのが我が社の常。もちろん、外食なんてもっての外だけど、近々それも変化があるかもしれない。正社、派遣、バイトを問わず、女子社員はみんなそんな淡い期待を持っている。
我が社の王子様がなんとかしてくれるんじゃないか、って。
「今日は朝から、ずーっとぼーっとしてるし」
「そんなの、……いつものことですよ」
 というよりも、週明けはみんなそうだと思う。
「それよりも、由美さん。その呼び方、いい加減やめてくれませんか? 本当に嫌なの、嫌いなのっ」
 あー、ごめんごめん、と気のない返事で返す彼女を、私はぐっとねめつける。彼女は明後日の方向を見ながらも、話しを元に戻した。
「でもホントになんかへんだよぉ、今日の間島ちゃん。ため息ついちゃあ、ぼーっとして。そうかと思えば、ぼーっと淡麗王子ばっか見てるし」
「……タンレイ、王子?」
 聞き慣れないワードに、私は思わず眉をひそめる。
「アンタの課のホープ、清住偉人の事だよぉ」 
 私のぼやけた脳味噌がギクシャク動き出した。
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