限定なひと
「見目麗しい外見だけど、中身は淡泊っていうか、むしろ冷淡な感じしない? あの子。だから淡麗だってさ。みんな旨い事言うよねぇ」
 ふぅん、と気のない返事をしたつもりだったけれど。彼女はなぜか意味ありげな笑みを口元に浮かべて、こっちを見ている。
「な、なんですか」
「べーつーにぃ、なんでもないけどさぁ。でも、やっぱちょっとちがうんだよねぇ。先週までの間島ちゃんとはさ」
 咄嗟に取り繕う言葉を探す。とは言え、そんな都合のよい魔法の言葉がさくさく出てくるほど、私のCPUは高性能ではない。言葉を詰まらす私を見ながら、彼女がニヤリと嗤った。
「金曜日、二人で池垣製菓に書類持っていったんでしょ? で。その後、どうなったのよ?」
「な、ないない。無いです、何にもないっ」
 慌てて否定するけれど、すればすれほど彼女のニヤつきが大きくなっていくから、なんだか墓穴を掘っているような気もしてくる。
「もう、大変だったんだってさ、先週の飲み会。元々、例の日本屈指の大企業、清州産業グループのル・マルシェと業務提携の噂? あれの真相が明らかに!? なぁんてアンタんとこの無責任課長が余計な事を吹聴したもんだから、それでなくても部外者がわんさか状態だったのに」
 ああ、そういえば課長がそんなことを言ってたような。
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