限定なひと
「それに輪をかけて、更には商品部の淡麗王子と販売促進部の暴れん坊大将軍のコラボレーションときたもんでしょ? 女子社員の参加率も半端なく高くてさ」
 最近、大手広告代理店から転職してきた販促の鈴原さん。この人も清住君に負けず劣らず人気が高い。由美さん情報だと、たぶん私と同じくらいの年齢で、清住君以上に背も大きいけれど、とにかく声が大きいリーダーシップの塊みたいな人。女子社員の間では『頼れる&護られたい&結婚したい人』ナンバーワン、だそうだ。
「なのに肝心の王子は飲み会に現れず、大将軍様もトラブル発生でドタキャン。噂の真相も全然解明されずで、みんなぶぅぶぅ言っててすごかったらしいよぉ」
「……だからって、私のせいじゃないです、けど」
 そぉ? ほんとに? としつこく食らいついてくるのは、たぶん、女子社員でこの手の話が一個もない私だからだろう。
 とにかく極力目立ちたくない私は、必然的に地味で冴えない風体。だからもちろん男性社員には見向きもされないし、課長の一件を見てもわかる通り、扱いも極めて雑だ。
 でも別に構わない。
 むしろ、男性との接触が減って助かってるくらい。
「でもさぁ、土曜日の夜。背の高い雰囲気イケメンな眼鏡男子に抱えられてフラフラな制服姿の間島ちゃんを、女子社員寮の近くで見かけた人がいるんだなぁ、これが」
「だ、誰っ!」
 思わず声が大きくなる。彼女が満面の笑みを浮かべた。
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