臆病な背中で恋をした ~2
「それがねー」

 戻る時期を部長は『近いうち』としか口にしなかったらしい。
 
「いつ会えるかって会社来るの、楽しみになるわぁ」

 フィルムを剥がしたおにぎりを頬張って、初野さんはにんまり笑った。
 

 亮ちゃんが帰ってくる。・・・逢える。
 本当に思いがけなくて、どこか信じられてない。
 うれしい。
 逢いたい。
 触れたい。
 亮ちゃん。

 鼻の奥がつんとして目頭が熱くなった。目が潤むのを我慢して我慢して。鶏のつくね団子を口に運ぶ。もう違う話題に切り替わった彼女のお喋りに、上の空で相槌を打ちながら。

 津田さんは知ってる、早く訊かなきゃ。頭の中はその事でいっぱいになっていた。社長も知っていたはず。でも二人ともわたしに黙ったままだった。

 味方になってくれてるんだと勝手に思っていた。どこか裏切られた気持ちがして、胸がじくじくと痛む。なんだか悲しくて・・・泣きたかった。
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