臆病な背中で恋をした ~2
 亮ちゃんもわたしに気が付いた。思わず立ち上がって息を呑む。顔を見るのは別れたあの夜以来だった。

「亮・・・ちゃん」

 黒の三つ揃いにアイスブルーのネクタイ。前髪を分け目から少し斜めに流し、全体的に後ろに撫でつけた髪。・・・変わっていない大好きな顔。深い眼差しが自分を見つめて前に立った時。もう何も考えられず、そのまま衝動的に胸にすがりついていた。

「亮ちゃんっっ」
 
「・・・・・・明里」

 耳元で低く声がして、強く抱き締められたのはほんの一瞬だった。両肩に置いた手が躰を引き離し。涙を滲ませたわたしを見下ろす眸を僅かに歪めて、亮ちゃんはおもむろに言った。

「・・・これから会ってもらいたい人がいる」



 心臓が。どくん、と大きく跳ね上がって震えた。破れて壊れるかと思ったくらいに。
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