臆病な背中で恋をした ~2
30分ほど走り、ふと見慣れた街並みだと気付けば。自分の最寄り駅付近のコインパーキングに車は乗り入れられていた。今まで津田さんが送り迎え以外で、わたしの地元に寄ったことは無かったし、今日は驚かされてばかりだ。
降りてどこに向かうのかと思ったら、駅でも飲食街でもない。食事に誘われたんだとばかり思っていただけに、頭の中にはクエスチョンマークが飛び交う。

わたしの左手を取ると、そのまま自分のコートのポケットに納めて家の方角に歩き出す。冬に恋人同士がするようなシチュエーションに、さすがに気持ちが落ち着かない。

「あ、あのっ」

「なに」

「手・・・っ」

目で訴えてみたけど無視されて、もっときゅっと握られた。さっきのキスといい、なんだか急に津田さんが津田さんじゃないみたいな。

どうしていいか分からないまま、いつもの公園を過ぎ。何か話そうと思うけど、いつもは感じない緊張感に包まれていて。結局、お互いに無言でわたしの家の前まで来ていた。

「・・・送ってもらって、あり」

「あんたの家族に挨拶する」

半身振り返った彼を見上げ、お礼を言いかけたのを。低くはっきりとした口調が遮った。

「・・・え」

「黙って俺に合わせろ。いいな」


津田さんの射抜くような眼差しに、呼吸すら忘れて。わたしは茫然と見つめ返すだけだった。





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