臆病な背中で恋をした ~2
4-2
「夜分に突然、申し訳ありません」

そう言って丁寧に頭を下げた津田さんは。いきなりで目が点になっていたお父さんに上がるように勧められ、リビングで名刺を差し出しながら自分を紹介した。

「グランド・グローバルの津田一弘と申します。尚人(なおと)さんがご在宅の際にまたあらためてご挨拶に伺いますが、明里さんとお付き合いをさせていただいています」

「ああ・・・そうですか」

お風呂も上がって、テレビを観ながら晩酌中だったスェット姿のお父さん。頭を掻きながら、弱ったなぁみたいな顔で笑って名刺を受け取る。

3人掛けのソファにわたしと津田さんが、リビングテーブルの角を挟んでスツールにお父さんがちょこんと座ってる。ナオがまだ帰っていなかったのが不幸中の幸いで。ほっと胸を撫で下ろした。挙動不審になりそうなわたしを、絶対に見抜いちゃっただろうから。

それよりも。津田さんがナオのことまで知っていたとか、・・・こんな普通に営業トークが出来る人だったとか、自然に笑えてるとか。色々な意味で、わたしの脳内が容量オーバーに陥っていた・・・・・・。
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