臆病な背中で恋をした ~2
連れて来られたのは、完全個室タイプのカニ料理のお店。魚はダメでも、エビとカニは大丈夫なわたしの為だ。むき身のカニを軽くお鍋でしゃぶしゃぶすると、ふっくらして甘くて頬っぺたが落ちそう。

「おいしい~」

一人でほこほこしていたら、向かいに座った亮ちゃんがやっと口許を緩めてくれた。その隣りの津田さんからは、割りと冷めた視線がわたしに刺さっていた気もする。

他にも天ぷらや和え物、カニをふんだんに使ったお料理が並んで食べ切れそうにないくらい。お腹を休憩させながら、ゆっくり箸を進めていると。おもむろに亮ちゃんが言う。

「・・・・・・それで、明里は津田と一緒に住みたいのか」

一瞬、答えに詰まって。住みたいかって訊かれたら、ものすごく積極的にそう考えてるんでもないし。かと言って、住みたくないって即断言するのもちょっと津田さんに失礼なような。言葉を考えながら、ひねり出す。

「・・・亮ちゃんはどうすればいいって思う?」

結局のところ、亮ちゃんがダメなものはダメだって思うから。
わたしが切り返した質問に、亮ちゃんはどことなくブリザードの気配を放ちながら、すっと目を細めた。

「つまりお前は嫌じゃないんだな・・・?」

「うーんと・・・。だって亮ちゃんが信頼してる人だし、亮ちゃんもわたしが津田さんといる方が安心なんじゃないかって思ったんだけど・・・」

瞬間に、パキンと音がして。亮ちゃんが手元の割り箸を真っ二つに折った。
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