しあわせ食堂の異世界ご飯2
 パンッ! パンパンッ!!
 火の魔法が空高く打ち上げられて、収穫祭のスタートを告げる。街中からわっと拍手が起こり、これから三日間は楽しいお祭りの時間だ。

 アリアは大きく深呼吸して、気合を入れる。
 今から、秋の大収穫祭のキノコ大会が始まろうとしているのだ。会場となるステージの広場に行くと、すでにセレスティーナとシンシアの姿があった。
 王女だと身分を明かすことはしないので、庶民が着るようなワンピースとブーツ姿だ。それはアリアも同じなのだが、違うところがあった。
(ふたりとも、お供の人を連れてる……)
 てっきり個人の戦いだと思ったが、そうではなかったようだ。
(でも、考えたらそうだよね)
 王女が共もつけずに、ひとりで山の中へ入っていくわけがない。危険の少ない山らしいが、野生動物がいないわけではないのだから。
 アリアに気づいたセレスティーナが、声をかけてきた。
「ごきげんよう、アリア様。……おひとりなの?」
「ごきげんよう。いえ、侍女が一緒です」
「そうなの。まあ、誰がいたとしても優勝するのはわたくしだわ」
 セレスティーナは扇で口元を隠し、優雅に微笑む。その瞳を見ると、自分が負けるとは微塵と思っていないようだ。
 アリアも何か言った方がいいだろうか。そう思ったが、それより先に司会者の声が広場に響いた。
『お集まりのみな様、おまたせしました! これからキノコ大会を開催いたします!!』
「おおぉぉぉ~っ!」
 司会者の宣言を聞くと、集まった人々が盛り上がる。
 ざっと見まわした感じ、参加人数は三十人ほどだろうか。この人数が山に入り、キノコを収穫する。かなり厳しい大会になりそうだ。
 アリアは観客側にいるシャルルを見つけ、手招きをして呼ぶ。
 セレスティーナとシンシアが共を連れ参加するのだから、アリアも堂々とシャルルを味方につけて問題はない。
 シャルルに事情を説明し、一緒に参加する。
『では、ルールを説明しましょう!』

 キノコ大会のルールは、以下の通りだ。
・司会者の『開始』という合図とともに、スタートとなる。
 終了時刻は、合図から三時間後。広場に設置されている鐘が鳴るので、それまでに広場へ戻ってこないと失格になる。
・収穫場所は、近くの山のみ。
 その山であれば、奥まで行っても問題はない。ただし、違う山や場所、店などで購入するなど不正をした場合は即座に失格となる。
・勝負は、収穫したキノコの大きさによる。
 量や種類の多さ、珍しさは考慮せず、純粋なひとつあたりの大きさで勝敗を決める。
・優勝者への賞品。
 皇帝陛下からの言葉と、トロフィーが贈られる。

 アリアは司会者から説明されたルールを聞き、思わず開いた口が塞がらない。隣で聞いていたシャルルに、「知ってた!?」と問いかける。
 だってまさか、リベルトが表彰式に出てくるなんて! シャルルも知らなかったようで、首を振る。
「でも、だから優勝したら妃に……みたいな話だったんですね。今まで謁見できなかった陛下に、会えますし」
「確かにそうね」
 謁見して断られてしまうのであれば、無理やり会ってしまおうということだろうか?
(でも、この勝負方法を決めたのはローズマリー様だけど)
 セレスティーナも実は知っていたのだろうか? と、アリアはこっそりセレスティーナを覗き見る。しかしどうやら知らなかったようで、口元を扇で隠していても、嬉しさで震えているのがわかってしまった。
 近くにいるシンシアも目を瞬かせているので、知らなかったのだろう。
 だが、これで三人ともが俄然燃えてしまった。だって、優勝すればずっと会いたくても会えなかったリベルトに会えるのだから。
 アリアたちの思いを知ってか知らずか、司会者が高らかに宣言する。
『それでは、キノコ大会スタートです!!』
「よーし! 行くわよ、シャルル!」
「はいっ!!」
 参加者が一斉に広場から飛び出して、山へ向かった。
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