しあわせ食堂の異世界ご飯2
どうしようか悩むアリアに、ローレンツも微笑む。
「そうですよ、アリアさん。私たちのことは気にしないでください」
「ローレンツさん……。そうですね、わかりました。でしたら、私はとびきり美味しい料理をふるまいたいと思います!」
「ええ、その方が嬉しいですから」
アリアは頷いて、開店まで待ってもらうことにした。
そしていざリントとローレンツが列に並ぼうとしたところで、口をパクパクさせて門番がこちらを見ていることに気づいた。
(あ、そうか! 門番さんは、リントさんがリベルト陛下だって知ってるんだ)
もちろん、勤めている全員がリベルトの顔を知っているわけではない。彼は門番という立場だったため、知っている数少ない人間だったのだ。
なので、皇帝と一緒に食堂の列に並ぶなんて……と、思っているのだろう。しかも、順番は門番の方が早いのだから、ことさらに。
「あ、ああ、あ……っ、あの、ど、どうぞっ!!」
「? いや……俺たちは後ろに並ぶが――ああ、兵士か。いつもご苦労」
「はいっ!!」
リベルトは並んでいた門番が王城勤めであることに気づき、ねぎらいの言葉をかける。門番は、その言葉が嬉しかったのだろう、すぐに敬礼しリントの後ろへ並び直す。
――が、その行動をリントが静止した。
「今の私は忍んで来ているんだ。リベルトとして、接することはしなくていい」
「ですが……」
そう言われても、門番はどうしていいかわからない。
自分の上司どころか、相手はこの国の絶対君主だ。本来であれば、こんな簡単に会話をできる相手でもないのに。
門番は困ってしまったようで、アリアに助けを求める視線を送ってくる。
「ええと……」
とはいえ、アリアにだってどうすることもできない。
(門番さんは順番を譲りたいけど、リントさんたちは順番通り門番さんの後ろに並びたいんだよね?)
普通に考えれば、到着順に並んでもらっているので、リントとローレンツが後ろに並ぶのが筋だろう。
けれど、門番の気持ちもわからなくはない。
(王侯貴族に無礼を働いて、不敬になったら……って考えちゃうもんね)
平民が貴族に何かした場合、身分差のせいで罰せられてしまうことだってあるのだ。
けれど、リントがそんなことで怒るような人でないということは、アリアが一番わかっている。
リベルトがリントとしてお忍びで市井にやってくるのは、しあわせ食堂のおいしいご飯を食べたいだけではなく、庶民の目線にたって国情を視察する目的もあるのだ。
アリアがジェーロにくる前に聞いていた、リベルトの「冷酷な皇帝」という前評判は真っ赤な嘘。
本当は戦争が終息した今、他国から責められないための情報戦略なのだ。仕掛けられ再び争いが始まってしまったら、その負荷は一気に国民へといってしまう。それらを避ける目的もあり、リベルトは冷酷に振る舞っているのだ。 そんなことを考えているうちに、ほかのお客さんがやってきてしまった。
アリアは門番に笑いかけながら、「ごめんなさい」と手を合わせる。
「門番さん、後ろの二人なら大丈夫ですから、そのまま並んでいてください」
「えぇっ、ですが……」
「ほら、ほかのお客さんが来ちゃいましたし」
アリアがそう告げると、門番も列の後ろに目を向けた。もちろん、そのお客さんはリントとローレンツの後ろへと並ぶ。
ここでリントたちの順番を入れ替えると、きっと後から来たお客さんに苦情を言われてしまうだろう。
お店としても、順番はきちんと守ってもらいたい。
ということで、フォローは入れるも、アリアは申し訳なさそうに門番に微笑むことしかできなかった。
***
「そうですよ、アリアさん。私たちのことは気にしないでください」
「ローレンツさん……。そうですね、わかりました。でしたら、私はとびきり美味しい料理をふるまいたいと思います!」
「ええ、その方が嬉しいですから」
アリアは頷いて、開店まで待ってもらうことにした。
そしていざリントとローレンツが列に並ぼうとしたところで、口をパクパクさせて門番がこちらを見ていることに気づいた。
(あ、そうか! 門番さんは、リントさんがリベルト陛下だって知ってるんだ)
もちろん、勤めている全員がリベルトの顔を知っているわけではない。彼は門番という立場だったため、知っている数少ない人間だったのだ。
なので、皇帝と一緒に食堂の列に並ぶなんて……と、思っているのだろう。しかも、順番は門番の方が早いのだから、ことさらに。
「あ、ああ、あ……っ、あの、ど、どうぞっ!!」
「? いや……俺たちは後ろに並ぶが――ああ、兵士か。いつもご苦労」
「はいっ!!」
リベルトは並んでいた門番が王城勤めであることに気づき、ねぎらいの言葉をかける。門番は、その言葉が嬉しかったのだろう、すぐに敬礼しリントの後ろへ並び直す。
――が、その行動をリントが静止した。
「今の私は忍んで来ているんだ。リベルトとして、接することはしなくていい」
「ですが……」
そう言われても、門番はどうしていいかわからない。
自分の上司どころか、相手はこの国の絶対君主だ。本来であれば、こんな簡単に会話をできる相手でもないのに。
門番は困ってしまったようで、アリアに助けを求める視線を送ってくる。
「ええと……」
とはいえ、アリアにだってどうすることもできない。
(門番さんは順番を譲りたいけど、リントさんたちは順番通り門番さんの後ろに並びたいんだよね?)
普通に考えれば、到着順に並んでもらっているので、リントとローレンツが後ろに並ぶのが筋だろう。
けれど、門番の気持ちもわからなくはない。
(王侯貴族に無礼を働いて、不敬になったら……って考えちゃうもんね)
平民が貴族に何かした場合、身分差のせいで罰せられてしまうことだってあるのだ。
けれど、リントがそんなことで怒るような人でないということは、アリアが一番わかっている。
リベルトがリントとしてお忍びで市井にやってくるのは、しあわせ食堂のおいしいご飯を食べたいだけではなく、庶民の目線にたって国情を視察する目的もあるのだ。
アリアがジェーロにくる前に聞いていた、リベルトの「冷酷な皇帝」という前評判は真っ赤な嘘。
本当は戦争が終息した今、他国から責められないための情報戦略なのだ。仕掛けられ再び争いが始まってしまったら、その負荷は一気に国民へといってしまう。それらを避ける目的もあり、リベルトは冷酷に振る舞っているのだ。 そんなことを考えているうちに、ほかのお客さんがやってきてしまった。
アリアは門番に笑いかけながら、「ごめんなさい」と手を合わせる。
「門番さん、後ろの二人なら大丈夫ですから、そのまま並んでいてください」
「えぇっ、ですが……」
「ほら、ほかのお客さんが来ちゃいましたし」
アリアがそう告げると、門番も列の後ろに目を向けた。もちろん、そのお客さんはリントとローレンツの後ろへと並ぶ。
ここでリントたちの順番を入れ替えると、きっと後から来たお客さんに苦情を言われてしまうだろう。
お店としても、順番はきちんと守ってもらいたい。
ということで、フォローは入れるも、アリアは申し訳なさそうに門番に微笑むことしかできなかった。
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