しあわせ食堂の異世界ご飯2
 仕事終わりで家に帰る人たちとすれ違いながら、アリアとシャルルは王城に続く大通りを歩いて行く。
 ときおり吹く風が冷たくて、少しだけ肩が震えた。
 酒場の前を通ると、楽しい笑い声が聞こえてくる。どこの世界でも、仕事が終わったら飲む人はいるんだなぁとアリアはぼんやり考える。

 王城のアリアの部屋に着くと、すぐにシャルルが謁見の申し込みを行ってくれた。
 本来であれば、すぐリベルトまでその旨が通達されることはないけれど……シャルルにはフォンクナー大臣にも会えるか確認をしてもらっているので、何かしらの返事はもらえるだろう。
 シャルルを待っている間、部屋のソファに座っているが落ち着かない。
 紅茶を飲んで、時計を見て、まだかまだかとシャルルの戻りを待つ。今までこんなにも待ち遠しいことがあっただろうか――きた!
 ノックされたドアに向かって、アリアは「どうぞ」と声をかける。
「戻りました、アリア様!」
「どうだった? リベルト陛下と、お会いすることはできそう?」
「それが……」
 アリアが問いかけると、シャルルが顔を歪める。おそらく許可が下りなかったのだろうと思い、アリアも落胆する。が、そういう問題ではなかった。
「どうにかリベルト陛下にお会いできないか、フォンクナー様にお話をしたんです。けど、その返事がリベルト陛下は外出中……というものでした」
「え……?」
 シャルルが聞いてきた内容に、アリアは目を見開いて驚く。
 自室で寝て休まないまでも、執務室で大人しく仕事をしているだろうかと思っていた。それがまさか、出かけているとは思わなかった。
「ちなみにどこへ出かけたかは……」
「教えてもらえませんでした」
「そうよね」
 想像以上に残念な結果で、アリアはため息をつく。会えずとも、せめて一目だけでもその姿を見られたら……なんていう考えは、甘い幻想だったようだ。
 落ち込むアリアを見て、シャルルは精一杯励ましの言葉を送る。
「大丈夫ですよ、アリア様。出かけているということは、元気っていうことですよ!」
「ありがとう、シャルル。確かにそうよね。動けるくらいであれば、そんなに悪いわけじゃないのよね」
 そう考えると、気持ちも少し落ち着いてくる。
 ひとまず帰ることにして、アリアたちは王城を後にした。
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