クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
千石くんと初めて会った東京タワー。あんなロマンチックさじゃないけれど、今もまた少しだけ魔法の力を感じる。
もしかして、人と人の間にはこんな時間が訪れるの?たまに世界の色を変える勢いでやってくるものなの?

私は意を決してカバンを開けた。
中から小さな紙袋を出す。何日もカバンに入れっぱなしで少しよれてる。

「これ、遅くなっちゃったけど」

千石くんがラーメンの空の鉢を退け、テーブルをさっと拭くとそれを受け取る。

「あ、これ」
「あの時借りたハンカチ……と、もうひとつは開けてみて。使わなかったら、ごめんね」

ハンカチは東京タワーで私の涙を拭いてくれたものだ。洗ってアイロンをかけ、いつまでも渡せずにいた。
千石くんが小さな小箱の包み紙を取り、開ける。

「ネクタイピン……」

私が用意したのはネクタイピンだ。なるべくシンプルで、でもどこにでもありそうじゃなくおしゃれに見えて、いかにもなブランドロゴが入っていなくて、且つ彼が身につけて安っぽく映らないものを……。そんな気持ちで選んだ。正直、今までの彼氏に贈ったどのプレゼントより気を使った。

「好みと違ったら……ホント捨てちゃって」

千石くんのアーモンド型の瞳が大きく見開かれる。次の瞬間、その頬がぶわっと赤く染まった。
口元が緩み、えっと、とかあーとか言葉が出てこない。こんな千石くんの様子初めてで私がうろたえてしまう。

「せ、千石くん?」

千石くんが目元まで赤くしながら、顔を上げ私をみつめた。

「嬉しいです。……すごく。嬉しい。ありがとうこざいます、真純さん」
「たいしたものじゃないけど……千石くんに助けられること、すごく多いから。そのお礼」
「お礼されるほどのことはしていません。でも、嬉しいです。あなたの気持ちが嬉しい。いいのかな。こんなに幸せで」
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