クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「子どもの頃、両親と車で旅行してて、こんなことがあったな。父がお腹すいたって言い出して。夜遅いサービスエリアに寄ったの」

つい自分のことを語りだしてしまい、慌てた。私も非日常に惑わされてる。

「お父さん、ラーメン食べたんですか?」
「そう、やっぱり大盛り。でも、うちの父は小柄で細身でね。欲張って食べきれなくて母に怒られて。小学生だった私が手伝って食べたんだった」

懐かしい思い出をどうして話したくなってしまったんだろう。ふと思いだした昔話を、千石くんと共有する必要なんてないのに。

「真純さんはひとりっ子なんですか?」
「そう」
「弟や妹がいそうに見えた。ザ・長女って感じですよね」
「それ、よく言われる」

答えて自分で笑ってしまった。千石くんも「でしょう?」と笑っている。

「俺もね、サービスエリアに思い出があります。5年くらい前に涼次郎と深夜に寄ったんです。涼次郎、小学生3年だったかな?母親と喧嘩して飛び出して。帰国してた俺が車で探し回って、やっと携帯が繋がったと思ったら新幹線で名古屋にいるっていうんですよ」

東京から名古屋に家出?小学3年生が?それってかなり普通の家出じゃない気がするんだけど。
すごい、千石家のパワー型遺伝子……。

「車で迎えに行って色々話しながら帰ってきて。涼次郎とその時サービスエリアでラーメンを食べました。普通のラーメンなんですけど、妙に美味くて楽しくて」
「わかる。不思議な空間なのよね、深夜のサービスエリア。やたら明るくて、普通の世界と違うの」
「今も、そんな感じです。俺、浮かれてるのかな。あなたとふたりでカッコつかない感じでラーメンすすってるのが、ちょっと楽しい」

うん、私も。
楽しいよ。すごく楽しいよ。
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