クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
7.一度きり
師走というだけあって12月はあっという間に過ぎていった。
総務はどこの課も年末の忙しさを感じているだろう。営業部は契約書や保管書類など、内部書類を提出するのが遅い。たいてい、年末などに「あ、これ出してなかった」と慌てて処理を頼んでくる。
そうなると会社の内側を回している総務部は大忙しになるのだ。
社外資料の多い渉外グループは12月半ばには今年度の提出書類を締めてしまった。役所が締まるギリギリに持ってこられても年内処理ができないからだ。早めに片付いて空いた時間は法務労務グループを手伝うことにして、12月は忙しく過ぎていく。

なお、野々花の旦那様の歩さんはあの翌日には退院し、今はすっかりいいそうだ。野々花からは感謝の言葉とともに「千石くんってすごくイイ男じゃない!あんなにしてくれるなんて、きっと真純のこと好きなのよ」などなど、割と核心をついたコメントをもらった。私は何気なく「いい部下よ」と答えておいた。

いい部下。私の心をグラグラさせる点では悪い部下だ。

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