クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
これから、私は千石くんに抱かれるのだ。たった一度だけ、すべてを彼に明け渡す。

「東京タワー……」

何を口にしていいかわからなかった。困って、私の口から飛び出したのはひっかき傷みたいな言葉。

「最初で最後なんだから、行っておけばよかったね。東京タワー」
「……そうですね」
「あ、でも、お互いもう思いださないほうがいいか。そうだよね」
「真純さん」

千石くんがグラスを置く。私の右手からグラスを取り、それもテーブルに置いた。

「もう五ヶ月近く前の話なんだね。きみが部下になってからは四ヶ月くらい……なんか早かったんだか、長かったんだか……」

千石くんが私の手首を掴む。心臓が一際大きく拍動した。

「真純さん、もう黙って」

引き寄せられ、そのまま唇を奪われた。
立ったまま、深く唇が重ねられる。柔く粘膜同士が融け合う頃には、待ちきれず互いの舌が深く絡み合っていた。
私の手は千石くんの背にしがみついていて、千石くんは私をきつく抱き締めていた。

どうにもならなかった。止めることも止まることもできなかった。
視線を交わしたのは一瞬で、私たちはキスを続けながらベッドに倒れ込んだ。
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