クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「気が重い~」

うじうじ呟いていると、孝太郎が私の肩をつかみ、ぐるんと身体をひっくり返した。
裸の胸が彼に向かって丸見えになって、今更だけど、シーツをぎゅっと鎖骨までひきあげる。

「真純さん、そんなことばっかり言って。嬉しくないですか?俺からのプロポーズ」

間近にある孝太郎の顔。付き合って二年経つけれど、こんな風に接近されると、まだドキドキが止まらない。

「嬉しい……です」
「もしかして、プロポーズはふたりっきりがよかった、とか?」

う、と私は停止した。
それはおおいにある。彼の価値観と違って、私はプライベートなことはふたりきりでひっそりやりたい方なのだ。

そっと頷くと、孝太郎ががばっと身体を起こした。なになに、どうしたの?
孝太郎は、テーブルの上に置いてあったバラの花束と指輪を取ってくる。昼間、私に贈ってくれたものだ。

「孝太郎?」
「やり直し、しますね」

真顔の孝太郎はベッドに座った。私を布団から引きずり出し座らせる。ちょっとちょっと……。
向かい合った格好で、孝太郎が深呼吸をした。

「真純さん、俺と結婚してください」

まっすぐ見つめる瞳には窓の向こうの夜景が映ってきらめいている。綺麗。飲み込まれてしまいそう。

「出会ってから、ずっとあなたが好きです。離れている間も、あなたがいるから頑張れた」

心臓が苦しいほど、鳴り響いていた。孝太郎が今、私だけを見ている。

「忙しくてあなたに寂しい思いをさせるかもしれない。会社では俺の妻ということで、思わぬ不利益を被るかもしれない。それでも、俺といてほしい。生涯隣にいてほしい」
「孝太郎」
「ずっとずっとあなただけを愛し続けます。結婚してください」

私を捉える瞳は力強い光を灯していたけれど、強引で支配的なそれではなかった。優しい深い愛を感じる。
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