クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
キッと睨みつけると、千石くんが微笑んだ。

「怒った顔も可愛いですね。真純さんは全部可愛い」

生意気の極みみたいなことを言いおってからに、こいつは~。
……落ち着いて、私!ここでキャンキャン起こるような小娘じゃ駄目。こういうやりとりもシャットダウンよ!

これ以上関わるまいという空気を前面に出すと、彼を無視し、構わず総務部のオフィスのドアを開けた。

いつも通り挨拶を済ませ、パソコンの電源を入れると、その横からぐいと腕を引かれた。そこには山根さんと持田さん。

「ふたりで出社……もしや土曜からずっと一緒だったんですか?」

目をキラキラさせて山根さんが聞いてくる。
うわ、失敗した!ふたりでオフィスに入ったからだ!
ちなみに、千石くんは入ってすぐに井戸川課長に捕まり、人事の島で喋っているので、私たちのひそひそ話が耳にはいることはなさそうだ。

「そんなわけないでしょう?たまたまエントランスで会ったのよ」
「じゃあ、土曜のデートの首尾はいかがですか!?」

山根さんは完全に楽しんでいる。私と千石くんの間に何かの感情が生まれるのを、野次馬根性で楽しんでいる。若い子って怖いわぁ。

「食事、美味しかったわ」
「はいはい、それで」
「デザートまでたっぷりあって、お腹が苦しかった」

山根さんがため息混じりに言う。

「そういうことじゃなくてですね~」

焦れったそうな山根さんを横から小突いて、持田さんが口を開いた。

「不躾なことばかり聞かないのよ。……真純先輩、何か嫌な目とか遭ってないですか?大丈夫ですか?」

持田さんの過保護な勘ぐりが大当たり。……とは言えないのよね。
私は彼女たちの上司だし、千石くんも同じチームなわけだから、関係性を悪化させるわけにもいかない。
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