クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
ぐったり疲れ果てている私をさすがに気遣ったのか千石くんは一定の距離を置いている。
今の私は危険水域だ。感情氾濫一歩手前だ。寄らば斬るぞ、このやろー。

定時間際になって、社内メールが1通。秘書課の泉谷さんからだ。
自販機のところに来られる?というもので、私は立ち上がる。今朝のことだろうことはわかった。
自販機のスペースに行くと、泉谷さんが先に缶コーヒーを飲みながらひと息ついていた。

「よ、阿木、お疲れ様」
「お疲れ様です。この度はご迷惑をおかけしました」

私が頭を下げると、泉谷さんは明るく笑った。
メガネをかけた柔和な雰囲気の彼は、私のひとつ上の先輩で、総務部に配属された当初は同じ人事課だった。それから彼が秘書課に異動になり、私が二課に異動になったのだ。泉谷さんは、一番お世話になった先輩といっても過言ではない。

「阿木のせいじゃないだろ。横手がちょっと前から御曹司と幼馴染だってのはオフィスでアピールしてたんだけど、それがいつの間にか『婚約者だ』にグレードアップしたあたりから、須藤課長は危ないって目で見てたみたいだよ」

ああ、やっぱり秘書課は相手が千石くんだって把握済みなのね。そうよね。横手さんがみんな話したと思う。
< 80 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop