クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
階段を降り始めると彼がぼそっと言った。

「先ほど秘書課の泉谷さんとお話しされてましたね」

誰でも見えるスペースだし、彼が見かけていても不思議はない。でも、メッセージを見られていたことと相まって、どきんと胸が鳴った。

ん?いや、彼に弁明するようなことは何もないぞ。

「今朝の件で、色々と。泉谷さん、私のすぐ上の先輩なのよ。昔同じ課にいたし」

言い訳風にならないように、少し冷たく言う。それがどうしたの?くらいの雰囲気だ。
先に踊り場に降り立ち見上げると、そこには普段にない空気の千石くんがいた。
表情は冷たいくらいなのに、瞳の奥にある光はギラギラ燃えている。
感じるのは強い憤り。
なんでそんな表情をしているの?私、あなたに対して何もしてないけど。

「あなたはあまり自覚が無いようですが、男に対して隙があり過ぎますよ」
「は……」
「以前の恋人に対しても、会社の先輩に対しても、付け込まれる要素が多すぎる。見ていてあまり気分のいいものじゃありませんね。無意識に物欲しそうにするのは」

何言ってんの?
何言ってんの?
何を言ってんのよ、こいつ!偉そうにーっ!!

「今度は秘書課の男とホイホイ食事に行って口説かれるんですか?そして、そんなつもりはないと言うんですか?その隙が思わせぶりに見せるんですよ」
「私、そんな態度取ってない」

怒りを押し殺して低く言うと、千石くんがツカツカと階段を降りてきた。
そのまま誰もいない踊り場の壁に追い詰められる。
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