罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。


原川は野球部に所属しており、岩崎先生は野球部の顧問だ。

野球部員の悪い噂はすぐに先生のところに入る様になっている。

課題を出し忘れた、授業中寝ていたなどの悪態は、その時の担当科目の先生により岩崎先生に告げ口され、後日怒られているのを何度か目撃した事たある。



「お前今日生徒会終わったら俺と話し合いな」

「げ~勘弁してくださいよ」

「生徒会長で、野球部部長。そんなお前が課題を出さないなんて言語道断」


そう言って軽めに怒る岩崎先生と、わざとらしくペコペコ謝る原川。きっと終わって二人きりになったら岩崎先生はもっと怒るんだろうな。


そんな二人を見ていると、続々と生徒会メンバーが集まりだした。

岩崎先生はそんな様子を見て、席を立ちあがった。

それと同時に香るシトラスの香り。自然に熟れた果実の香りは、柔軟剤だろうか。それとも香水だろうか。キツすぎない優しい香りは、私の大好きな匂いだった。

私は香りを忘れないように、深く息を吸い込んだ。





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