罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。



だけどそうも言ってられない。


なぜなら今年からは――。



「そんなに嫌そうな声出して、内心下げるぞー」


痛っ、と思わず声が漏れると同時に、頭を押さえながら振り返る。



「岩崎先生!」



白いスポーツTシャツに、黒いジャージを履いている先生。首元にはストップウォッチがぶら下がっている。


先生は意地悪そうに口角をあげて、また軽く私の頭をポンッとバインダーで小突いた。



「もー!髪の毛崩れるからやめてくださいよ!」

「そんなの気にしてたら今日のサッカーできないぞ」

「サッカー無理。疲れるー。今日見学してたーい」


そんな私の言葉を無視して「早く集合しろよー」と言いながら先に歩いて行ってしまった。



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