覚悟はいいですか
礼が選んだのはライラックピンクのワンピースドレス
デコルテから袖にかけてレースになっていて、ウェストは太めのリボンでアクセントをつけ、フワッとしたひざ丈のスカートにもレースが重ねられてる

アラサーの私にとってピンクは可愛すぎる気がして躊躇したけど、少し青みががったこの色なら大丈夫かな・・・

着替え終ると、関根さんは私を鏡の前の椅子に座らせ、髪やら顔をいじりだした

「フフッ、海棠様にとって貴女様は初恋の君なんですね」

「えっ?」

「いえ、ピンクのライラックを選ばれたので…」

なんて呟きながら、ハーフアップした髪にドレスと同色の小花をピンで挿していく

「さぁ、できました」
関根さんは満足そうに鏡の中の私を見て微笑む
パールのクラッチバッグを渡され、カーテンの外に出ると、艶のあるダークグレーのスーツに着替えた礼が私を見て止まった

あ、もしかして思ってたのと違った?
8年前の感覚で選んじゃって、似合わなくて何も言えなくなったとか?!

もう、歳、わかってる?前とは違うのよ~
自分ばっかり大人っぽくてかっこよく決めちゃってずるい!!

かなり落ち込んだ私は、盛大に拗ねたまま、それでも確認してしまう

「似合わない、よね?」

関根さん、ごめんなさい!一生懸命、いろいろやってくれたのに。
礼がずっと黙ったままだから心配そうな顔させちゃった・・・

ため息が出そうになっていると礼は片手で口元を隠し、横を向いてボソッとつぶやいた

「予想外の可愛さだ、どうしよう…」

「はっ?」

目が点になってしまった
言われた言葉を反芻する内に首から耳から熱を持ってくる

アタフタしていると

「あらあら、お二人ともなんて初々しい」

関根さんの笑い含みの台詞が聞こえて、パッと顔をあげると・・・
耳まで真っ赤にした礼が、こちらを横目に見ている目と目があって、
また顔をそむけてしまった・・・

着てきた服を入れたショップバックを店員さんに渡される
あ、お会計しなきゃ、と思っていたら、礼が黒いカードをサッと出して済ましてしまう
あわてて払うと言っても、

「俺が付き合ってもらってんだから」

とか言って、とりあってくれない
しかたなく、

「ありがとう」

素直にお礼を言ったら、満足そうに笑ってから

「時間無いから、急ぐよ」

と急に手を引かれ、あっという間にまた車に乗せられた
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