覚悟はいいですか

優しい悪夢のような時間だった
切なく静かに、胸は引き絞られるように苦しく、それでいて心はとても穏やかでーーー

カーテンコールに湧く中で拍手を一生懸命贈ると、苦しいと叫ぶ声の代わりに涙がとめどなく溢れた

私の心の二重奏に気付かない礼は、苦笑しながらまっさらなハンカチを渡してそっと肩を抱きしめる

ほんとの心を隠すために、泣きながら照れたような微笑みを作って礼を見つめ、ありがとうと呟いた
それ以上は彼を正視出来なくて、俯いてたくましい胸にそっと頭をすり寄せる

今夜だけ、いいえ今だけいいから、あなたの恋人のつもりで、あなたの胸に甘えるのを許してね・・・

いつまでも続いてほしい時間は無常に過ぎていく

結局、涙は止まることなく、礼は私を宥めながら家へと送り届けてくれた・・・
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