DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


煥《あきら》は一人でいたり、話し掛けられると文徳の陰に隠れたり、亜美に呼ばれて仕方なくそっちに行ってファンに一言だけ挨拶したり、また逃げ出して一人になったり、さよ子と鈴蘭が意を決して声をかけるのに生返事をしたり。


あいつ、何かおもしろい。


一つ年下の高校生男子を見てるっていうより、猫の動画を眺めてる気分になる。


さよ子や鈴蘭くらいの美少女相手には、もうちょっと愛想よくしてやれよ。


それとも、気まぐれ猫ちゃんには人間の美少女の価値がわかんねぇの?



何気なく駅舎のほうを向いた姉貴が、ハッと息を呑んで体を硬くした。



「どしたの?」



おれがそっちを見るのと、姉貴がハイヒールを鳴らして駆けてくのと、同時だった。



「きみ、あのときの! 阿里海牙くんでしょう? わたしのこと、覚えてる?」


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