DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
バンドメンバー、一年前までは五人っつってたよな。
ベーシストが紅一点だったはずなの。
でも今、ステージに向かって左側には不自然な空白があって、そこに花束が一つ置いてある。
よく見る風景だ。
胞珠の売買がビジネスになるって風潮が、凄まじい勢いで日本にも広がってる。
たぶんだけど、おれらの世代、じいさんばあさんにはなれない。
まさに終末世代。
寝て起きたら死後の世界なんじゃないかって、いつも感じる。
おれがこの町から離れてたのは、たった一年だ。
たいした時間が流れたとは思わない。気付いたら過ぎ去ってた。
変だよなー。中学くらいまでは、一年一年、もっと長かったのに。
この一年で駅前の風景は変わった。
レトロなヨーロッパ風で有名だった駅舎は、半分以上がぶっ壊れてる。
進入禁止のバリケードが巡らされた向こう側は、ぼこりと膨れ上がった暗色の巨大な塊。
ダンジョン、って呼ばれるモノ。