大好きな先輩は隠れ御曹司でした
これなら確かに渡す相手は特定しなくてもいいな、と眺めていたら静香さんがふふっと小さく笑った。

「業務とはいえ、会えるの久しぶりなんでしょ?こっちは忙しい時じゃないし、少しゆっくり話してきたらいいわ」

「そういう訳にはいきませんよ。社内ですし、勤務時間内ですし……」

「相手は社内でモテモテの人気者ですし?」

「ーーーはい」

会話が小声で交わされるのは仕事中の静かなオフィスだから、だけではない。

思わずこぼれ出たため息を隠すように「行ってまいります」と声をかけて、席を立った。




⌘ ⌘ ⌘



施設資産課より10階上、海外営業部のフロアは如何にも一流商社なオフィスだ。海外からの電話も多いし、外国人の社員もいる。女子社員もオシャレで綺麗。
彼女たちのゆるふわな巻き髪やひらひら揺れるフレアスカートがオフィスの華やかさを増しているみたいだ。
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